商品・サービスが売れるかどうかは、ポジショニング次第です。

つまり、商品・サービスを市場でどう位置付けるか? ここでほぼ全てが決まると言っても過言ではありません。ポジショニングはセールスコピーより遥かに重要です。ポジショニングは、例えるなら家を建てる際の「地盤」 や「設計図」 のようなものです。この地盤がしっかりしていなかったり、設計図が曖昧だったりすると、どんなに立派な建材(優れたコピーライティングや美しいデザイン)を使っても、安定した家(売れる商品・サービス)を建てることはできません。

セールスコピー、マーケティングメッセージ、Webサイトの文章、営業担当者のトークスクリプトなど、顧客に伝える全てのメッセージは、明確なポジショニングがあって初めて効果を発揮します。誰に対して、どんな独自の価値を提供し、競合とどう違うのか、というポジショニングこそが、商品・サービスを成功に導くための最も根幹的で重要な要素なのです。

ポジショニングの理論は数多くありますが、個人的に推奨したいのは、April Dunford(エイプリル・ダンフォード)氏の理論です。

April Dunford(エイプリル・ダンフォード)氏のポジショニング理論

出典:https://www.aprildunford.com/

April Dunford(エイプリル・ダンフォード)氏は、プロダクトマーケティングとポジショニングの分野で世界的に著名なコンサルタントであり、講演家です。特に、スタートアップやテクノロジー企業が、競争の激しい市場で明確な位置づけを確立するための実践的なアプローチを提唱しています。彼女のポジショニング理論は、その著書「ポジショニングの10ステップ(ダイレクト出版)」で詳しく解説されています。

彼女の理論の核となる考え方は、ポジショニングとは、顧客の頭の中に自社製品・サービスが競合と比べてどのような位置にあるかを明確に定義することである、というものです。単なるキャッチコピーやスローガン作りではなく、製品の価値を最も理解し評価してくれる顧客を見つけ、彼らにとって製品が「明らかに素晴らしい(Obviously Awesome)」ものであると認識させるための戦略的な作業と位置づけています。

氏のポジショニング理論を構成する要素は、以下の通りです。

競合となる代替手段(Competitive Alternatives)顧客が自社の商品・サービスを使わない場合にどんな選択肢を取るか、という視点から競合を定義する。
独自の属性(Unique Attributes)商品・サービスが持つ、競合となる代替手段にはない独自の機能や特性を洗い出す。
顧客にもたらす価値(Value for Customers)独自の属性が顧客のどのような課題を解決し、どのようなメリットをもたらすのかを明確にする。
最適な顧客セグメント(Target Customer Segmentation)商品・サービスのユニークな価値を最も高く評価し、最も大きなメリットを得られる顧客層を特定する。
市場カテゴリー(Market Category)商品・サービスが属する(または属するべき)市場の種類を定義する。

彼女は、これらの要素を分析し、組み合わせて考えることで、強力なポジショニングを構築できるとしています。

強力なポジショニングを作る5ステップ・フレームワーク

April Dunford(エイプリル・ダンフォード)氏のポジショニング理論は、業種業界を問わず、多くのケースで適用可能です。

では、ポジショニング策定を進める具体的なステップとフレームワークをご紹介します。

STEP1. 最高の顧客を理解する

どのような企業が、どのような課題を抱え、そして、自社の商品・サービスから最大の価値を享受できるのかを特定します。

調査方法

既存の優良顧客への詳細なインタビュー

  • サービス導入前の具体的な業務上の悩みや課題は何だったか?
  • サービスの存在をどのように知ったか?
  • 導入を決定する上で重視した点は何か? 他に何を検討したか?
  • サービスを導入して、具体的にどのような点が改善されたか?
  • サービスのどの機能やサポートが特に役立っているか?
  • 他の同業他社にこのサービスを勧めるとしたら、どのような点を強調するか?

社内の顧客接点を持つ担当者(営業、カスタマーサクセス、サポート)からのヒアリング

  • どのような顧客から引き合いが多いか? どのようなタイプの顧客に提案しやすいか?
  • 顧客が最初にどのような課題を訴えてくることが多いか?
  • サービス導入後の顧客の満足度はどうか? どのような顧客が特に成功しているか?
  • 解約した顧客はどのような理由でサービス利用をやめたか?

顧客データの分析

  • 顧客の属性情報(企業規模、業種、事業内容、部署など)と、サービスの利用状況、契約継続期間、アップセル・クロスセルの実績などを紐づけて分析する
  • 特にサービスの利用が活発で、成果が出ている顧客層に共通するパターンを探る
分析方法
  • インタビューやヒアリングで得られた情報を整理し、顧客が抱える「真の課題」や「達成したい目標」を言語化する
  • 成功している顧客層に共通するペルソナ(具体的な顧客像)を作成する。彼らの役職、所属部署、日々の業務、サービス導入の意思決定プロセスなどを具体的に描き出す
  • 顧客がサービスのどの側面に最も価値を感じているのかを抽出する

STEP2. 真の競合となる代替手段をリストアップする

顧客が自社の商品・サービスを使わない場合、他にどんな解決策を検討するのか? 考えられる全ての選択肢を洗い出します。

調査方法

顧客インタビュー
STEP1のインタビュー時に、「このサービスを知る前は、どうやってその課題に対応していましたか?」 「他にどのようなサービスやツールを検討しましたか?」 と具体的に尋ねる。

営業担当者からのヒアリング
商談において顧客が比較対象として挙げたり、検討していることが判明した代替手段(競合他社、他社サービス、既存システム、手作業など)の情報を集約する。

失注理由の分析
顧客が自社サービスを選ばずに他の代替手段を選んだ理由を具体的に把握する。

市場調査レポートや業界情報の収集
顧客が業務効率化や品質向上のために一般的にどのような選択肢を検討する傾向にあるか、市場には他にどのような企業がいるかを調査する。

検索エンジンの活用
顧客が課題解決のためにどのようなキーワードで検索しているかを調べ、潜在的な代替手段や関連サービスを特定する。

分析方法

集めた情報を基に、「競合となりうる代替手段」 のリストを作成します。直接競合だけでなく、以下のようなものも含まれます。

  • 間接的な競合:特定の機能を持つ別の種類のツール、汎用的な表計算ソフトなど
  • 社内対応:既存のシステムでの対応、自社でのツール開発、手作業
  • 何もしない:課題は認識しているものの、特に何も対策を講じないという選択肢

リストを作成したら、それぞれの代替手段について、顧客から見たメリット(例:既存のものをそのまま使える、コストが安いなど)とデメリット(例:非効率、エラーが多い、拡張性がないなど)を整理・分析します。

STEP3. 独自の特徴を特定する

競合となる代替手段と比較して、自社サービスだけが持っている、あるいは圧倒的に優れている特徴や能力を明確にします。

調査方法

自社サービス内容の詳細な棚卸し
提供しているツール機能、サポート体制、専門家によるコンサルティング内容、導入プロセスなどを全てリストアップする。商品リサーチの質問テンプレートが役立つ。

サービス開発/提供担当者へのヒアリング
サービスの設計思想、こだわっている点、他社にはない強みなどを聞き出す。

競合となる代替手段との比較分析
STEP2でリストアップした主要な代替手段について、提供している機能やサービス内容を詳細に調査し、自社サービスとの違いを洗い出す。

顧客からのフィードバック
「他のサービスにはない、ここの点が良い」「〇〇ができるのはこのサービスだけだった」といった顧客の具体的な声に注目する。

分析方法
  • 洗い出した自社サービスの全ての要素と、競合となる代替手段の要素を比較し、自社に「独自の特徴」としてリストアップする
  • これらの特徴が、競合と比較してどの程度ユニークで強力なのかを評価する

STEP4. 独自の特徴が顧客にもたらす価値をマッピングする

STEP3で特定した独自の特徴が、STEP1で理解した顧客の課題をどのように解決し、どのような具体的なビジネス上のメリット(価値)をもたらすのかを関連付けます。「顧客がその商品を使った後に、何を得る?」 という質問が効果的です。商品やサービスを利用することで、顧客の生活や仕事が具体的にどう変わるのか、どんなポジティブな変化が訪れるのかを考えるのです。ここでは、特徴(Feature)を利益(Benefit)に転換し、さらにその先の変化(Advantage)まで描写するフレームワークを使います。

BtoBサービス(業務効率化ツール+サポート)の例

特徴(Feature)利益(Benefit)変化(Advantage)
クラウドベースで提供されるいつでもどこからでもインターネット経由でアクセスできる。リモートワークや外出先からの業務遂行が容易になり、場所にとらわれない柔軟な働き方を実現できる。災害時などの事業継続性も向上する。
既存の主要な社内システムと連携機能がある現在利用しているシステムのデータをそのまま活用できる。手作業でのデータ移行が不要になる。既存資産を有効活用しながらスムーズな導入ができ、システム間のデータ不整合による確認・修正作業や人的エラーを削減し、業務効率が大幅に向上する。
専任のカスタマーサクセス担当者がつくサービスの最適な活用方法や運用上の疑問点をいつでも気軽に相談できる。サービスの習熟度が早期に向上し、定着率が高まる。サービスの持つ価値を最大限に引き出し、投資対効果を最大化できる。
AIによる入力内容の自動チェック機能入力ミスや漏れをリアルタイムで検知し、修正を促してくれる。後工程での手戻りやリカバリコストが激減し、業務の品質が安定する。担当者の確認作業の負担が軽減され、より付加価値の高い業務に集中できる。

BtoCサービス(健康的なライフスタイル支援サブスク)の例

特徴(Feature)利益(Benefit)変化(Advantage)
栄養士監修のバランスの取れた献立が毎週届く自分で栄養バランスを考えて献立を作成する手間がなくなる。栄養に関する専門知識がなくても安心できる。健康的な食生活が無理なく継続でき、体調が改善したり、体重管理がしやすくなったりする。食生活に対する不安がなくなり、自信を持って日々を過ごせる。
高品質なオーガニック食材や厳選された素材を使用食材の安全性や品質について心配する必要がない。美味しい食事を楽しめる。体内に入れるものへの安心感が得られ、心身ともに満たされる。食事の時間が楽しみになり、健康維持へのモチベーションが高まる。
アプリで体調や気分を記録・分析できる機能自分の健康状態やサービス利用の効果を客観的に把握できる。改善点が見えてくる。自分の体の変化を「見える化」することで、健康管理への意識が高まり、より効果的な行動を促進できる。サービス利用の成果を実感しやすく、継続に繋がる。
同じサービス利用者と交流できるオンラインコミュニティ健康やライフスタイルに関する悩みや情報を共有できる仲間が見つかる。専門家からのアドバイスも得られる。同じ目標を持つ人々と繋がり、励まし合いながら楽しく健康習慣を続けられる。一人では乗り越えられなかった壁を突破し、モチベーションを維持できる。

このフレームワークは、自社製品やサービスを「提供者側」 の視点ではなく、「顧客側」 の視点で語り直すための強力なツールとして機能します。

STEP5. 最適な市場カテゴリーを特定する

最終ステップは、ターゲット顧客にとって最も理解しやすく、商品・サービスのユニークな価値が際立つ市場カテゴリーを決める作業です。ここでの目的は、

  • 顧客がサービスをすぐに「何であるか」 を理解できるようにする
  • 顧客が、サービスを検討する際に「他の何と比べればいいか」 が分かるようにする
  • その結果、サービスを「見つけやすく」 する

といった点に集約されます。

調査方法

競合となる代替手段のカテゴリー調査
STEP2でリストアップした競合や代替手段が、市場や顧客から一般的にどのようなカテゴリー(例:「業務効率化ツール」 「サプライチェーンマネジメントシステム」 「コンサルティングサービス」 など)として認識されているかを調査する。

業界アナリストや市場調査レポートの参照
当該サービスに関連する市場セグメントやカテゴリー分類に関する情報を収集する。

検索キーワード調査
ターゲット顧客が自身の課題解決のためにどのようなキーワードで情報収集しているかを分析し、彼らがどのようなカテゴリーのソリューションを探しているかを推測する。(例:「〇〇業務 効率化 ツール」 「サプライヤー管理 システム 比較」 など)

ターゲット顧客へのインタビュー
「このサービスは、御社の〇〇(業務プロセス)を支援する△△(カテゴリー名)のようなものですね?」 といった形で、顧客の認識や分類の仕方を直接確認する。

分析方法
  • 自社サービスのユニークな価値とターゲット顧客のニーズを最も効果的に伝えられるカテゴリーは何かを検討する
  • 既存のよく知られたカテゴリーに位置づけるメリット(顧客の理解が早い、比較検討の土俵に乗りやすい)とデメリット(競合が多い、差別化が難しい)を比較検討する
  • 既存カテゴリに小さなサブセグメント(ニッチ領域)を見つけ、そこに足場を築くことも検討する(真っ向勝負を避ける)
  • もし既存のカテゴリーが自社サービスのユニークさを表現しきれない場合は、新しいカテゴリーを創造するという選択肢も検討する

ポジショニングを文書化する

ポジショニングの検討結果は必ず文書に残し、関係者間で共有することが非常に重要です。
April Dunford氏も、ポジショニングは頭の中だけでなく、チーム全体で共通認識を持つための「共有可能な資産」 として言語化する必要があることを強調しています。

ただ、注意してください。ただの穴埋め式のテンプレートで済ませてはいけません。

従来のポジショニング論では、ある種の「ポジショニングステートメント」 と呼ばれる定型文を作成することが一般的でした。例えば、「ターゲット顧客は〇〇であり、××という課題を抱えています。当社のサービスは⬜︎⬜︎というユニークな特徴により、顧客に~~~という価値を提供します」 のようなものです。

しかし、April Dunford氏はこのアプローチだけでは不十分であると指摘しています。なぜなら、単なる穴埋め式でステートメントを作成しても、ポジショニングを構成する各要素(競合、属性、価値、顧客、市場カテゴリー)間の複雑な関係性を深く理解するのが難しいからです。

彼女が推奨するのは、特定の定型文に無理やり押し込めるのではなく、ポジショニングを構成する主要な要素と、それらがなぜそう定義されるのかという理由や背景を詳細に言語化することです。

1. 最適な顧客(Best-Fit Customers)

  • どのような顧客層か?(企業規模、業種、役職、デモグラフィックなど)
  • 彼らが抱える具体的な課題やニーズは何か?
  • 彼らがサービスのどんな点に最も価値を感じ、成功しているか?
  • なぜその顧客層が最適なのか? (理由や根拠)

2. 真の競合となる代替手段(Competitive Alternatives)

  • 顧客が自社サービスを使わない場合に、他にどのような選択肢を取るか?(直接競合、間接競合、社内対応、何もしないなども含む)
  • それぞれの代替手段の、顧客から見たメリット・デメリットは何か?
  • なぜそれらが競合となりうるのか? (理由や根拠)

3. 独自の属性(Unique Attributes)

  • 自社サービスが持つ、競合となる代替手段にはない、あるいは圧倒的に優れている特徴や能力は何か?
  • なぜそれらがユニークなのか? (競合との比較に基づいた根拠)

4. 独自の属性が顧客にもたらす価値(Value)

  • 独自の属性が、最適な顧客の課題をどのように解決し、どのような具体的な利益や成果をもたらすのか?
  • 特徴 → 利益 → 変化のフレームワーク
  • なぜその価値が顧客にとって重要なのか? (顧客の声やデータに基づいた根拠)

5. 最適な市場カテゴリー(Market Category)

  • 自社サービスはどのような市場の種類に位置づけられるのが最適か?
  • なぜそのカテゴリーを選ぶのか? (顧客の理解のしやすさ、競合環境などを考慮した戦略的な理由)

これらの要素を、それぞれ見出しをつけて箇条書きや文章で分かりやすく整理します。

単に要素を列挙するだけでなく、それぞれの定義が「なぜそうなのか」という根拠や、他の要素との関係性(例:「この競合と比較すると、この特徴がユニークであり、それがこの価値に繋がる最適な顧客はこういう人たちだ」といったロジック)も記述することが重要です。

書面に残す形式は厳密に決まっているわけではありませんが、GoogleドキュメントやGoogleスライドなどの共有しやすいツールで作成し、関係者誰もがアクセスでき、理解できるようにすると良いでしょう。重要なのは、チーム全体がこのドキュメントを見て、自社サービスのポジショニングについて同じ理解を持てるようにすることです。

アウトプットのサンプルを用意しましたので、参考になればと思います。以下からPDFでダウンロードできます。
ポジショニングワークの文書のサンプル(BtoB)
ポジショニングワークの文書のサンプル(BtoC)

ポジショニングステートメントやバリュープロポジションといった定型文は、あくまでもポジショニングワークの「成果を分かりやすくまとめるツール」 であり、その裏には、数多くの調査と分析、議論に裏打ちされた詳細な情報が存在しています。この詳細なプロセスを経ずに定型文を埋めようとしても、それは表面的な言葉遊びに過ぎず、真に強力なポジショニングは確立できません。「なんかやった感」 だけで終わってしまいます。

まずは徹底的にポジショニングの各要素を書き殴り、思考し、「自社が市場でどのように存在すべきか」 を掘り下げる。そのうえで、後からいつでも参照できるように定型文で簡潔にまとめる、という順番が正しいアプローチです。その定型文のテンプレートとして、Positioning Canvasというものがあります。ここまで解説したきたポジショニングの各要素を一枚にまとめるためのもので、これはApril Dunford氏の公式サイトから無料でダウンロードできます。ご興味があれば、ぜひこちらのページからダウンロードしてみください。

まとめ

April Dunford氏のポジショニング理論における主要な5つのステップを簡単にまとめると、以下のようになります。

  1. 真の競合となる代替手段を特定する:
    → 顧客が自社の商品・サービスを使わない場合に、代わりに何を選ぶのかを明確にする
  2. 独自の属性(能力)を洗い出す:
    → 競合となる代替手段にはない、自社の商品・サービスならではの特徴や能力を特定する
  3. 独自の属性がもたらす価値を明確にする:
    → 洗い出した属性が、顧客にどのような具体的な利益や成果をもたらすのかを定義する
  4. 最適な顧客を定義する:
    → 自社が提供する独自の価値を最も高く評価し、必要としている顧客はどのような人たちかを明らかにする 
  5. 最適な市場カテゴリーを決定する:
    → 自社のユニークな価値が顧客に最も伝わりやすく、理解されやすい「市場の枠組み」 は何かを定める

これらのステップは、ポジショニングの核心を特定し、言語化するための基盤となります。

April Dunford氏のポジショニング理論は、非常に論理的で実践的ですが、そのステップをすべて完璧にこなそうとすると、少し難しく感じてしまうかもしれません。

ですが、あまり難しく考えすぎないでください。ポジショニングワークは、何も最初から完璧なアウトプットを目指す必要はありません。大切なのは、立ち止まらずにまずはやってみることです。今回ご紹介したステップの中から、たった一つでも良いので試してみてください。

例えば、「競合となる代替手段をリストアップする」 だけでも構いません。自社製品・サービスがなかったら、顧客が他に何を選ぶかを真剣に考えてみる。これだけでも、自社が思ってもみなかった選択肢に顧客が目を向けているという、驚くような事実に気づくかもしれません。ポジショニングやマーケティングメッセージを考える上で、非常に大きなヒントとなるはずです。

Q&A

Q
バリュープロポジションとは何が違うのですか?
A

バリュープロポジションは、ポジショニングという戦略に基づいて作成される「メッセージング」 の一部です。ポジショニングが「自社は何者で、誰に、どんな独自の価値を提供するのか」 という戦略的な定義であるのに対し、バリュープロポジションは「自社だけが顧客に提供できる価値提案」 をまとめたものです。つまり、ポジショニングが土台であり、バリュープロポジションはその土台の上に構築されるコミュニケーションのツールと言えます。

Q
創業初期や新規事業でまだ「最高の顧客」 がいない場合はどうすれば良いですか?
A

その段階では、「ポジショニングの仮説(Positioning Thesis)」 を立てることから始めます。想定されるターゲット顧客、彼らの課題、競合となりうる代替手段、自社が提供できるユニークな価値などを仮説として定義します。そして、その仮説を検証するために、想定顧客へのヒアリングやアーリーアダプターへのアプローチを通じて学びを深めていきます。

Q
ポジショニングは一度決めれば終わりですか?
A

ポジショニングは、一度決めれば永久に不変というものではありません。市場環境、競合の状況、顧客のニーズ、自社製品・サービスの進化などは常に変化します。そのため、ポジショニングも定期的に見直し、必要に応じて調整・洗練させていくことが重要です。特に、事業が成長したり、新しい製品を投入したりする際には、ポジショニングを再評価する必要があります。